サバイバルキャンプ報告書

miraitalkhamamatsu

2013年10月20日 16:07

障がいをもつ子と家族のためのサバイバルキャンプ&防災ワークショップの報告書ができました。

この報告書は以下のリンクからダウンロードできます。
https://docs.google.com/file/d/0BytoGhhGQsSlM1FPejZmMU1oTDA/edit?usp=sharing

障がいをもつ子と家族のためのサバイバルキャンプ&防災ワークショップ 報告書
(ゆめ風基金障害者市民防災活動助成金助成事業、浜松医科大学地域貢献事業助成事業)



【はじめに】
2011 年3 月11 日の東日本大震災から2 年半がすぎたが、現在(平成25 年9 月12 日 復
興庁資料)約28 万6000 人が避難者として登録され、そのうち99 人は現在もなお避難所での
生活を余儀なくされている。一方で、被災地から遠く離れたこの地域(静岡県西部地区:遠州
地方)では、徐々に市民の防災意識が薄まりつつある印象を持つ。
しかし、私たちが暮らす遠州地方は東海地震(東南海・南海との3連動地震も含めて)の想
定地域であり、長い海岸線(遠州灘)で太平洋に面しており、地震発生時には約15m の津波
の発生も予想されている。さらに50 ㎞離れたところには浜岡原子力発電所を抱えている。こ
うした状況の中で、東北地方と多くの地理的共通点を持ち、私たちは常に高い防災意識を持ち、
準備しておく必要があると言える。
東日本大震災では、多くの貴い命が失われたが、とりわけ障がいを持つ方の死亡者数は全死
亡者数の8.97%で、死亡率は一般の方の2 倍以上との報告が出ている(平成25 年4 月22 日
中日新聞)。また障がいを持つ方は避難所生活でも多くの困難を抱え、自宅避難を選択する方
も多く、自宅避難者には救援物資が行き届きにくかったり、ガソリンや救援物資を手に入れる
ために列に並ぶのが困難であったり、一般とは異なる物資が必要であったり、特別な配慮が必
要とされていた(重症児者の防災ハンドブック、発達障害児者の防災ハンドブック)。
社会的弱者である子ども、その中でもさらに弱い存在である障がいを持つ子どもの防災は、
どうしても置き去りにされやすい視点であるが、忘れてはならない視点である。
何らかの支援を必要とする子ども、障がいを持つ子どもに携わる職種が集まる「みらい
TALK」では、日頃の勉強会や講演会活動を通して、そうした子ども達と家族に防災への準備、
心構えをしていただく機会が必要であり、また私たち自身も避難所運営にはどんな配慮が必要
で、何を準備するべきか確認し、提言していく必要があるとの意見が挙がった。そうした意見
をもとに「障がいをもつ子と家族のためのサバイバルキャンプ&防災ワークショップ」を開催
するに至った。


【目的】
①障がいをもつ子にとって仮想避難所体験を通じて非日常生活への適応力の向上
②障がいをもつ子の家族にとってワークショップや仮想避難所体験を通じて、何が必要で、何
を準備すべきか、体験し、学ぶ場となる
③避難所運営に当たって、障がいをもつ子と家族に必要な配慮、支援を見出し、提言する
④障がいをもつ子と家族について市民の理解を深めるために、社会に向けて発信する

【方法】
日時:2013 年9 月22 日(日)~23 日(月・祝) 1 泊2 日
対象:年長園児から小学校6 年生までの障がいをもつ子とその家族
場所:浜松市立青少年の家、聖隷浜松病院センター会議室
内容:当日配布の「体験のしおり」参照
参加費:1 名につき1000 円
保険:損保ジャパンの国内旅行保険に加入

【結果】
参加応募は12 家族43 名(障がいをもつ子は12 名)あり、当日体調不良のため2 家族が不
参加となり、10 家族35 名(障がいをもつ子は10 名)の参加を得た。障がいをもつ子の内訳
は、在宅人工呼吸器管理・経管栄養を行っている重症心身障がい児が1 名、肢体不自由児が2
名、知的障がい児が3 名、発達障がい児が4 名であった。年齢は5~9 歳(平均6.7 歳)で、
男児2 名、女児8 名であった。その他、兄弟姉妹が8 名(2~11 歳、男児2 名、女児6 名)、
大人が17 名(男性7 名、女性10 名)であった。
スタッフは、実行委員22 名に加えて、ボランティアスタッフ13 名、ワークショップ講師4
団体(以下講師順:NPO 法人はままつ子育てネットワークぴっぴ、エネジン株式会社、NPO
法人すだち、浜松市危機管理課)の協力を得た。


22 日の防災ワークショップ①、②は聖隷浜松病院センター会議室にて開催し、ワークショ
ップ①では、NPO 法人ぴっぴの原田博子氏の指導のもと、ビニール袋でカッパ作り、新聞紙
でスリッパ作り、毛布で担架体験を行った。参加された10 家族とも大変熱心に取り組まれて、
笑顔も多くみられ、アイスブレークとしての役割も担っていた。
事後アンケートでも大変好評であった。




防災ワークショップ②では、「役に立つ!防災グッズを知ろう」と題して、エネジン株式会
社より低圧LP ガス発電機およびアクアクララの災害時の活用方法について紹介いただいた。


その後NPO 法人すだちの森田能行氏より簡易トイレ(段ボールトイレ)の活用方法について
紹介をいただいた。


最後に実行委員会スタッフより、100 円ショップで揃えられる防災グッズ
の色々について紹介した。

ガス発電機は、この後青少年の家に移動してから、近くの公園にて
実演も行っていただき、使用方法や注意点、実際の駆動音、発電量などを体験した。
事後アンケートでもいずれも好評であった。


ワークショップ後に青少年の家に移動し、避難所設営体験および夕食(非常食体験)を行っ
た。

避難所設営体験では、段ボールを利用して、パーテーション作成と段ボールベッド作成を行
った。皆で積極的に協力して、比較的スムーズに作成できた。

この際、部屋割りを行ったが、事前情報や当日の様子から音過敏性や新奇場面への苦手さの
あるお子さん、感染症から回復したばかりのお子さんを個室対応とした。個室が4 室しか用意
できず、大部屋に5 家族、個室の1 室に2 家族、残り3 家族をそれぞれ個室3 室に振り分けた。
しかし夜間どうしても眠れず興奮してしまうお子さんがいたため、個室が必要となり、急遽
研修室に段ボールベッドを設置して、対応した。
部屋割り(スペース確保)のむずかしさを実感した。


夕食では、非常食であるアルファ米と温めいらずカレー、フリーズドライ汁物、アクアクラ
ラの水を提供した。大変好評で、偏食が強いお子さんも完食されるなど、保護者の方も手ごた
えを感じられていた。同時に非常食の見本市と称して、多くの非常食を味見していただき、お
子さんが食べられるもの、食べられないものを実際に確認していただいた。事後アンケートで
も夕食が全体の活動を通して、最も評価が高い結果となった。




夕食後は、ワークショップ③として浜松市危機管理監 危機管理課長の松永直志氏より浜松
市の防災計画の現状と今後の見通しについてお話いただいた。ご家族からは予定した時間を超
過するほど多くの質疑が出ていた。また後の振り返りの中で、ご家族から「普段は直接話をす
る機会が持ていない行政の方と直接話ができたことが大変貴重だった」とのご意見も出ていた。


ワークショップ③に並行して、子ども達は夜のレクリエーション(暗闇でも楽しめる遊び)を体験した。
ランタンや懐中電灯などの灯りを頼りに、制作活動を行ったり、手歌遊びをしたり、風船遊び
をしたりした。最後は保護者も合流して、子ども達が制作したものをプラレールの周りになら
べてライトアップし、夜の街を電車が走る様子に見立てて、全員で合唱をして終了となった。
事後アンケートでも夜のレクリエーションが夕食についで好評であった。




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